デトロイト その2
今回、デトロイトに来た理由は3つある
一つは産業が衰退し行政が破たんした町がどのように再生していくのかを見ること。
また、デトロイトテクノで知られる音楽を触れること。
そして、世界的に有名な北米国際オートショーに行くことだった。
でも、そもそも市街地に人が少ないこの町では、クラブみたいなものがほとんど無く、夏のフェスのときだけ盛り上がるということだった。
なので今回はそんな街の現状と再生について。
(オートショーについては、別にまとめたいと思う。)
デトロイトの市境にある通りの名前を8mile(エイトマイル)と言う
(写真は8マイルロードと、それを表す標識)
8マイルロードから、デトロイト中心地に近い方には7マイルロード、外側には9マイルロードと、距離の名前が付いた通りが順番にあるのがこの町の特徴だ。
それを隔てているのが8マイルロードとなっている。
そして、この通りの名前がタイトルになった映画、それがエミネムの8マイルだ。
映画では、白人でありながらも金銭面で苦労しながら内側に住み、黒人文化と衝突するエミネムの姿を描いている。
そんな一本の通りを挟んで、どれほど雰囲気が変わるのか。
それを確かめたくて、おっかなびっくりレンタカーで行って見た。
まず内側のデトロイト市内側。
人も住んでるけど、朽ちかけた家と、すでに更地になった土地も多い。
一方で外側。
写真だと分かりにくいけど、少なくても崩れた家が無くて、人が住んでいる気配が強い。
市が違うとは言え、通り一本で世界が変わるのは、不思議に感じる。
後で出会った人は、8マイルそばの内側の通りを歩いていた時、金目の物を全部取られたって言ってた。
同じ時期に行ってたわけだし、車だったけど危なかったかもしれない。
多民族社会
黒人の多いデトロイトには、黒人の歴史を展示するアフリカ系アメリカ人歴史博物館がある。
その日はちょうど、黒人公民権運動の代表的人物、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの日で祝日だった。
ちなみにMLK Dayって言うから、最初は何かわかんなかった。
(ミルクかと思った。)
服屋のセールで配られたチラシに、MLKセールと書かれていて、そこにあった写真がキング牧師だったことでやっと理解した。
そんな特別な祝日だったからか、博物館には普段より沢山の人が来てたと思う。
だけど白人系の人は少ないし、アジア系はまず見かけなかった。
施設はとてもよくできている。
いかに大変な歴史を経て今に至るかを、奴隷船や、彼らが住んだ家、街の模型を通ることで、追体験できるようになっている。
そして順路の最後、出口の所には、初のアフリカ系大統領としてのオバマ大統領の写真とサインがある。
また、自分の好きな映画「グラン・トリノ」の舞台でもあって、モン族の多く住むエリアがあるらしい。
いろんな民族が住んでいるというのは、この町の大きな特徴だと思う。
SHINOLA
デトロイトという町が衰退した理由は、行政と自動車産業がタッグを組みすぎていることで、他の産業が生まれる芽を伸ばせなかったし、潰してしまったということだ。
行政は、自動車産業が衰退し始めて以来、ゼネラル・モーターズを入居させるためにGMタワーを作ってみたり、モーターショーを開催するための会議場と市街地を周回する新交通システムを作ったりしてきた。
これらは、新たな産業への転換を図るためではなく、あくまでも既存産業を復活させるためになされた事業だった。
そんな中で、新しいビジネスの芽の一つに、米国製の時計、自転車を作るSHINOLA(シャイノラ)がある。
今はバーニーズ・ニューヨークでも買えるから、せっかくだし本店でしか買えないものを聞いてみた。
だけど、ちょっと高いものしかないって数十万円する時計を紹介されたので、おとなしくメモ帳とか、手頃な文具をいくつか買った。
どれも洗練されたデザインで、ロゴにはデトロイトの文字が誇らしげに書いてある。
店員さんたちの感じも良く、ついでに近くにクラブが無いかを聞いたりしたけど、やっぱわかんないとのことだった。
このエリアには、雑貨屋、パン屋、カフェ、ビール工場やうまいサンドイッチ屋も集まって来ている。
いくつかの店先には、デトロイトの中心に店を構えることに誇りを持っている、そんな文句の書かれたステッカーが貼ってあったりする。
危険なイメージが先行するデトロイトだけど、なんとなく西海岸風のカジュアルな雰囲気があるこのエリアはとてもリラックスできる。
観光にデトロイトは魅力的かと言われたら、それはわからない
でも、この町で起こっていることに触れられたことは、とても有意義に感じた。
巨大産業によって肥大化した町と、その産業が衰退したことで、共に衰退して行った町。
いろんな民族がそれぞれの文化を持って、生きていく町。
それは決して他人事ではなく、あるかもしれない自分たちの将来だと思う。
そして、そんな町に見える希望みたいなもの、それは現地に行ってこそ感じられるのではないかと思う。