ニューオリンズ
ニューオリンズって町は、どこか懐かしい感じがする。
場所的にはアメリカでも最も南に近く、メキシコ湾に面したこの町は、アジアに近い訳じゃない。
どうして懐かしく感じるのか?
疑問を頭の隅において、町をぶらぶらしてみる。
まず食べ物が他の町と違う。
アジア人の自分とすると、幼い頃から親しんできた味に近い。
また町に漂う、何か有機物が腐敗した感じたの匂い。
東南アジアの街角で感じるあれがこの町には漂う。
どんなに綺麗に見える町でも、その町が持つ一種の悪臭ってあるもんだと思う。
ニューヨークとか北の方の町はどこかアンモニア臭が鼻につく。
一方でこの町は、気温が高くて水はけも悪く、じめっとしてるから腐敗臭になるのかなぁって思う。
アジアの感じが嫌いな人って、きっと香辛料とかだけじゃなく、こういう腐った匂いも嫌なんじゃないかと思うけど、逆に好きな人って、この腐った感じが結構嫌じゃないのかもしれない。
自分なんかはこの匂いに、何か緊張をほぐしてもらえるような安堵感を覚える。
そして、もう一つは風景。
また、夜の町の猥雑な盛り上がりは、盛り場特有の祝祭感があって、昼の真面目な顔を捨て去って享楽的に楽しもうっていうような、動物性を呼び起こす。
そもそも町の雰囲気って何が生み出すもんだろってことを、考えながら旅してる。
例えば東京とニューヨークってどこもオフィスビルがいっぱいある訳だけど、その違いを感じるところってなんだとかってこと。
でも、確たる答えだって思えるものは見つけられてない。
たぶんこれかなぁって思うのは、建物の高さ、密集度合、素材、街路樹、高低差、道路幅、水辺、天気や空の色なんかだと思う。
中でも高低差と天気はその土地がもともと持っているものだから、大きな影響があると思っている。
それは空の色が自分の住む関東地方の空に似ていたからだと思う。
南イタリアはいいところだけど、空が青過ぎてずっといるには疲れる感じがあった。
空の色の違いってのは、気候の違いだし、ざっくり言って緯度の違いからくる。
話は脱線するけど、ブラジルは赤道近くから、黒人、東洋人、白人と、それぞれ多く住むエリアが分かれていて、住みやすい場所と出身地の気候の関係を実感できる。
そんな亜熱帯のニューオリンズの冬も、なんとなく関東の秋に似ている感じがする。
(関東だけじゃなく、関西や九州もそうだろうと思う。)
ニューオリンズには日本の方がやっている「雪」って居酒屋がある。
フレンチマン・ストリートっていう、観光客だけじゃなく現地の連中も遊ぶエリアにあって、現地の人に愛されているのが分かる店だ。
日本の古い映画が壁に映されて、古い歌謡曲が流れる店内は、とても落ち着くいい店。
一人で着ていた地元の人に、「前も来ていたよね?」
なんて話しかけられて、「いや初めてだよ」って答えちゃったけど、後で後悔した。
それが自分に話しかけるきっかけだったことに気付いたからだった。
通りでは、各々の店から音楽が聞こえてきて、路上でもビッグバンドが演奏し、アーティストがナイトバザールを開いている。
でも店も、路上も音楽が溢れていて、町が音楽に浸かっているような町だ。
どこかから流れ着いた旅人が、そのまま居着いてホームレスになったりもしている。
でもそういう感じも、ミシシッピ川河口のこの町は受け入れている感じがして、何だかとても安心する。