ビニャーレス

バス停に着いたその時、次の行き先は決まった。

f:id:fiftyone29:20140203183646j:plain

それはビニャーレスという町。
そもそもハバナから数時間のバスで行ける所と言ったら、リゾート地バラデロ、古都トリニダード(トリニダー)、奇岩の谷ビニャーレスの3か所が有名。
1人でリゾートに行く気はしなかったから、トリニダードかビニャーレスに行くつもりだった。
ただ、バス停について係の人に聞いたら、トリニダード行きのバスは10分前に出発していた。
でもビニャーレス行きのバスはこの後出るよってことだったので、迷わずビニャーレスに行くことにした。
ハバナの宿で出会った旅行者には、バスが無ければ戻って来ると伝えていたけど、ビニャーレスはメキシコで知り合った旅行者に強く薦められてところ。
なので行ってみたい気持ちが強かった。

 

のんびりした田舎の高速道路みたいな道をバスでひた走る。

f:id:fiftyone29:20140203151759j:plain

畑や荒れ地が続く中、ときどき遠くに見える工場の煙突からは、真っ黒な煙が吐き出されている。
その道をまたぐ橋がちょくちょくかかってるんだけど、必ずその下には地元の人たちが居て乗り合いバスを待っている。
暑い日差しや突然の豪雨を避けるためなんだろう。
ところどころに国威発揚的なスローガンが掲げられた看板もある。
こういう南国感の強い場所だと、社会主義的なスローガンでも、なんだかマイルドに感じるから不思議。

その日はもちろん宿なんて決めて無い。
どうしようかちょっと不安になりつつ、でもなんとかなるだろうとは思っていた。
そんな時、隣に座っていたおじさんが話かけて来た。
どこの国から来たのかとか、まぁ他愛の無い会話。
そこで自分の名前を紹介したところ、思いがけずキューバ人の日本イメージに触れた。

キューバで野球が盛んなのは有名。
そんなキューバ人にとって、日本が最初のWBCワールド・ベースボール・クラシック)でキューバに勝って優勝したことは相当なインパクトだったらしい。
自分の名前は、そのときのWBCに出ていた選手と同じ名前。
だから親近感を持ったらしく、一発で覚えてくれた。

彼と会話してしばらく経ってから、彼はかばんから何かの紙を取りだした。
どうやら自分の親戚がやっている民宿に泊らないかって話だった。
それが相場の値段なのかわからなかったので、もう決まってるって言って断った。
すると彼はバスの中を歩き回りながら、バスの乗客に宿のあっせんをしていた。
その後、彼にはビニャーレスの町でもあったし、帰りのバスでも会った。
そこでわかった。
彼はハバナとビニャーレスを往復しながら、宿のあっせんをする仕事をしていたってこと。
では、なんで彼がわざわざバスに乗って営業しているのか。
それは、バスが目的地に着くとすぐに理解できた。
バスから降りると、自分の民宿に客引きするおばちゃんたちにものすごい勢いで取り囲まれる。
多分20人は居たと思う。
話はずれるけど、南の国では女性が良く働くんで、うざいんだけど、ちょっと尊敬する気持ちがある。
そんな輪の中で、誰の所がいいのかわからずちょっと迷っていると、何となく一人のおばちゃんについて外に出た。
その人、最初は英語を使っていたけど、どうもほとんどスペイン語しか使えないみたい。
でもまぁ値段もそんなに変じゃなかったから(食事代入るかとかうまく交渉できなかったけど)その人の所に決めた。

その宿では初めての日本人だったらしく、お互いに片言の英語とスペイン語でいろいろと話ができたし、一生懸命にもてなそうという気持ちが伝わってきた。

f:id:fiftyone29:20140205064901j:plain

 

そんなビニャーレス、なかなかにいいところ。

f:id:fiftyone29:20140204095507j:plain

まず町が小さくて、ほっとする。
車もそんなに走って無いから空気がきれい。
奇岩地帯はとにかく自然にあふれてて、きっとエデンの園ってこんな感じなんじゃないかと思うくらい雰囲気が良い。
ハバナと違って遊ぶところはないけど、町の人が観光客ズレしてないのもゆっくりできる。
2泊しかしなかったけど、本当にゆっくりするには良いところだとおすすめできる。

 

二重通貨制

キューバの情報は事前に調べずに行ったので、いくつか驚くことがあったんだけど、一番の衝撃は2つの通貨を使い分けていること。
ハバナでは外国人料金の高さに辟易してたけど、まぁそういう国はよくあるから、それだけなら仕方ないと思える。
だけどこの国は、外国人が使う通貨CUCと国民が使うCUP(ペソ・クバーノ)を使い分けていて、交換比率は1CUC=24CUPになっている。
外国人でもペソ・クバーノを使えないわけじゃないけど、現地の人に聞いたりしないと難しい。
この制度、外国人観光客からの外貨は欲しいけど、インフレで国民が困窮するのも困るってことから取り入れているとのこと。
これはメキシコに戻ってから会った日本人のキューバ音楽家と話してわかったけど、実はこの国のシステムを動かしている人たちはかなり優秀。
今後は適度にインフレさせつつ、いずれペソ・クバーノは無くす予定だそうだ。
外国人の自分としては、ちょっと腹立たしくも感じつつ、面白い試みだと感心する。

 

キューバに行ったらぜひ挑戦したい料理

それはナポリタン・スパゲティ。
しかもこれが国民食らしい。
今回キューバに行くまでは、日本発祥の食べ物で日本にしか無いと思ってたからかなりびっくり。
何かの間違いかと思ったけど、スパゲティの麺にトマトソースがかかってて見た目は似てる。
だけど、味は正直言って旨くない。
ぶよぶよにのびた麺に、塩気の無いトマトソースととけるチーズが乗ってるだけ。
これもキューバ音楽家に聞いたら、この料理はアメリカの経済制裁後の物資不足でできた食べ物らしい。
少しでも麺を増やすために一度ゆでた麺を水に漬けてふやかし、それを食べる前に暖めなおしてソースをかけて作るそう。
彼曰く、慣れてくるとこの味が恋しく思えるらしい。
それ以外の食べ物も、中南米的な豆のスープやふかしたタロイモとか、スパイスは効かせるけど、こざっぱりした料理が多い。
豆好きな自分としては、ピザとハンバーガーと違って食べ続けられる。
インドあたりの南アジア料理が好きなら、行けるんじゃないかと思う。

 

キューバのこれから

今はまだ、革命を指揮したフィデル・カストロが生きている。
親米的な考えの有力者も居るみたいだけど、彼の存在が反米体制を維持したい勢力の支柱になってるとのことだ。
彼が居なくなったとき、きっとこの国は変わるだろうと言われてる。
アメリカの目と鼻の先にあるのに、ここまでアメリカを排除できていること自体、すごいことだと思う。
もし親米な国になったとしたら、この国の雰囲気は変わるかもしれない。
一時的には政治的な混乱で入国できなくなるかもしれないとも言われた。
だから今のキューバを見るなら、今行くしかないよねって、キューバに行った旅行者たちとは話した。
もしキューバコカ・コーラが一般的になったなら、コークで作ったキューバ・リブレが普通になるのか。
そんなことを思う。

f:id:fiftyone29:20140203133815j:plain