サン・アントニオ

ものづくりへの安心感

 自分はものづくりなんて、もういわゆる先進国には無理なんじゃないかと思っていた。

将来的にどうなるかはわからないけど、これまで色んな国を回ってて思ったのが、工場がそこら中にある国なんて本当に少ないってこと。

もちろん中国には多い。

でも先進国の中で、ドイツ、もちろん日本、そしてアメリカは、ものすごい工場が多い国だと思う。

極端に言えば、その他の国に行くと、日用品でさえもいったいどこで作っているんだろうて思うほど工場を見ない。

もちろん交通機関が工場のそばを通ってないってのがあるかもしれないけど、先に挙げた3つの国は、高速道路からでも、電車からでも、頻繁に工場を見るわけで、やっぱり工業国なんだと思わされる。

 

もう日本よりも先に工場が外国へ移ってしまったアメリカみたいな国でさえ、本当にしょっちゅう工場を見る。

五大湖の沿岸もそうだし、テキサス州も石油精製工場を始め工場が多い。

アメリカの工業は終わったとかって言ったって、他のいわゆる途上国からしたら工業先進国に見えてるは間違いないと思う。

 

金融は行きつくとこに行くと、自分たちで自分たちをだましあって成立してるペテン臭さがあるし、情報システムは、今使えているものが数年で全く使えないものになってしまうような移り変わりの早い世界。

そういう中で、メーカーは実業として信頼できるみたいな感覚がたぶん存在している。

日本でもアメリカでも、メーカーの人は、金融やシステムの業界よりも上だと思っているような節を感じる。

それはテキサスのようなオイル産業の世界もそうで、システムだとかなんとか言っても所詮オイルとコンピュータが無いと動かないじゃないか、みたいな。

そしてこれから、環境破壊懸念はあるけど推進されるだろうシェールガス採掘でエネルギー価格が下がるだろうし、アメリカ人のマインドも国産を求める方向に変わってきているし、メイドインU.S.A.の存在感は少し揺り戻すと思う。

南部ではそういう地に足のついた安心感みたいなものがあるように感じた。

 

そんなアメリカ南部でも、特にアメリカ人が好きな町、それがサン・アントニオ。

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この国は歴史が浅いことがコンプレックスになってるわけだけど、その中でも古めな歴史的戦いの舞台「アラモ砦」と、スペイン風の建物と運河「リバー・ウォーク」がありアメリカのベニスとかって言われる。
残念ながらあんまり歴史には興味がわかなかったけど、再開発事例としては有名な場所なんで、滞在を楽しみにしていた。
 
水辺の環境の作り込みについては、滝や湧き水、建物の中を通る流れだとか、水路への流れ込み方にバリエーションがある。
また石畳の遊歩道も、トンネルや飛び石など散歩したくなる仕掛けになっていて気持ちいい。
ただ難を言えば、そこかしこに作り込まれてる感じがあってちょっと鼻につく。
言って見ればディズニーランド的。
 
これは、アメリカって国の全体に言えるわけだけど、東海岸なんかの古い町以外の建物は、良く言えば軽やか、悪く言えば薄っぺらい。
とは言え、エリアによってちょっと違って、温暖で乾いた地域の建物は本当に軽い感じな一方、北の方の湿り気のある地域だとちょっと歴史的で地域性を感じられる。
残念に思うのは、日本のロードサイド型の商業施設は、温暖で乾いたエリアのビジネスモデルを、建物まで含めて輸入してしまったことだ。
だから同じ薄っぺらい建物であっても、湿り気のあるエリアの建物を真似すればもう少し日本の環境にあっていた気がする。
どっちにしろ、海外の建物がそのまま日本の気候に合うわけないから、一緒だって言われればその通りかもしれないけど。
 

今までイメージのあまり無かった南部を、ミシシッピ州からテキサス州まで旅して来た。

たぶん他の日本人でも、カリフォルニアやシアトル、ニューヨークなんかに比べると、あんまり接点が無いエリアだと思う。
でも、地に足が着いている感じや、気候の感じについては、想像以上に心地良かった。
今回の旅ではアメリカ本土の外側を回ることになったけど、もし次回以降チャンスがあれば、内陸の町にも行ってみれたらと思う。
きっと違う発見があるだろう。

ヒューストン

テキサスのイメージ

テキサスと言って真っ先に思い浮かぶのは、自分が多感な時期のアメリカ大統領だった、ジョージ・ブッシュ氏(息子)だ。

そんな氏のイメージは、石油利権とイラク戦争って感じで、はっきり言って印象が良くない。

というところから、ガソリンを際限なく使ってエコ意識とかなく、そんな賢くなさそうな感じってのが、自分の中にできあがっていたテキサス州のイメージだった。

 

そういう勝手なイメージを持って、テキサス州最大の町、ヒューストンに着いた。

シェールガス関係の好景気もあって、石油関連産業のオフィスが集積する中心オフィス街は高層ビルの建設が続いている。

そして一歩中心地を離れると、町はひたすら大きく広がってる。

だから車があった方がもちろん便利なんだけど、歩ける範囲に飲み屋街がまとまってたりして、けっこう歩いてハシゴする人がいた。

むしろ日本の地方都市よりも歩いている人は多いかもしれない。

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それでもやっぱり特徴的だと思うのは、車で移動することが前提の町だってこと。

道幅、駐車場がしっかりしているのはもちろん、車であれば移動距離より時間距離を優先できるので、一つ一つの施設の敷地が大きく、隣の建物との間隔も広い。

そして、いろんな専門店が平屋で展開されていて、容積率を使ってない町だってことも特徴的だと思う。

例えば、マジック・ザ・ギャザリングのようなトレーディングカードゲームの遊び場みたいな店が、ファミレス規模で通り沿いにあったりする。

これがニューヨークだと、ただで居座れるスーパーマーケットのフードコートなんかで遊んでるわけで、土地が広いと違うなぁと思う。

 

またもう一つの特徴は、車移動だからってだけじゃなく、むしろテキサスの人のオープンな気質からだろうって感じる、店内の丸見えっぷり。

レストランなんかがそうなのはわかるとしても、さっきのカードゲーム屋も誰が遊んでるかがわかるし、下着屋なんかでも外から全部見えてる。

こういう文化は、なんかちょっと微笑ましいし、うらやましくもある。

そんな訳で、ちょっとテキサスのイメージが良くなってきた。

 

さらに郊外エリアを見ていると、この町のある種の可能性を感じた。

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それはこの町が狭い範囲に計画的に作られたわけじゃなく、個々人の思いでどんどん拡大して行ってるってところだ。

フリーウェイ沿いには点々とオフィス街ができ、その周辺にホテルや商業施設が立ち並ぶ。

それは誰かが全体計画を立てているわけじゃなく、開発会社が勝手に町を広げているんだと思う。

翻っていまの日本では、「閉塞感」がキーワードになってる。

それは狭いエリア、狭い市場に、あまりにも多くの人と会社がひしめき合っているからなんじゃないかと思う。

だからヒューストンを見ていると、狭いところにずっと固執して窮屈に感じるなら、もっと広い別のフロンティアに行けばいいんじゃないかって言われてる気がする。

都市で言えば、狭いエリアの都市計画なんて作り込まずに、緩いしばりで自由に拡大すること、いわゆるスプロールしていく方が、持続的な発展はできるんじゃないか。

そんな気がしてくる。

 持続的な発展って、どっかで限界あるとは思うんだけど、でもそういう展望があれば「閉塞感」に打ち勝てると思う。

そういうフロンティア精神みたいなものを、この地域の人からは感じる。

 

ただ一方で、スプロールしてできた町は、便利だけど薄っぺらい町になりがちだ。

だからこそ人が集まる場所は必要で、ヒューストンの町中にも飲み屋や遊び場が集まるエリアができる。

それは、たとえネットで連絡が取れても、実際に会って感じられる情報量は比べ物にならないほど多いからだと思う。

だから、リアル店舗や、飲み屋や、ニコニコ超会議コミックマーケットはこれからも必要だろう。

 

じゃあこういうゾーンは自然発生的に市場に任せることでできるから、都市計画は不要か?

やっぱりそこには、交通手段や電気、水道等のインフラが必要になるから、都市計画は必要なんだと思う。

 

自分が生まれ育ったのは、郊外で周りに畑や林も残るところだった。

それもあってか、密度の高い町にも魅力を感じつつも、どっかでしっくり来ない感じがある。

そういう中で、ヒューストンの低容積っぷりはけっこう心地良い。

そんな自由な開発の可能性と、都市計画のバランス、それがヒューストンで考えたことだった。

もともと良いイメージじゃなかったテキサス州だったけど、良い意味で裏切られた。

そして次の町はサン・アントニオ。

アメリカ人が大好きな、テキサスらしさの中心地へ向かうことになった。



ニューオリンズ

ニューオリンズって町は、どこか懐かしい感じがする。

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場所的にはアメリカでも最も南に近く、メキシコ湾に面したこの町は、アジアに近い訳じゃない。
どうして懐かしく感じるのか?
疑問を頭の隅において、町をぶらぶらしてみる。
 
まず食べ物が他の町と違う。
炊き込みご飯のジャンバラヤ、オクラと豆が入ったガンボスープとか、
アジア人の自分とすると、幼い頃から親しんできた味に近い。
 
 また町に漂う、何か有機物が腐敗した感じたの匂い。
東南アジアの街角で感じるあれがこの町には漂う。
 
どんなに綺麗に見える町でも、その町が持つ一種の悪臭ってあるもんだと思う。
ニューヨークとか北の方の町はどこかアンモニア臭が鼻につく。
一方でこの町は、気温が高くて水はけも悪く、じめっとしてるから腐敗臭になるのかなぁって思う。
アジアの感じが嫌いな人って、きっと香辛料とかだけじゃなく、こういう腐った匂いも嫌なんじゃないかと思うけど、逆に好きな人って、この腐った感じが結構嫌じゃないのかもしれない。
自分なんかはこの匂いに、何か緊張をほぐしてもらえるような安堵感を覚える。
 
そして、もう一つは風景。
フレンチクオーターって観光エリアは、完全に西洋風の町並みなんだけど、ミシシッピ川 のそばの雰囲気は、金八先生の河川敷に似た雰囲気がある。
また、夜の町の猥雑な盛り上がりは、盛り場特有の祝祭感があって、昼の真面目な顔を捨て去って享楽的に楽しもうっていうような、動物性を呼び起こす。

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そもそも町の雰囲気って何が生み出すもんだろってことを、考えながら旅してる。

例えば東京とニューヨークってどこもオフィスビルがいっぱいある訳だけど、その違いを感じるところってなんだとかってこと。
でも、確たる答えだって思えるものは見つけられてない。
たぶんこれかなぁって思うのは、建物の高さ、密集度合、素材、街路樹、高低差、道路幅、水辺、天気や空の色なんかだと思う。
中でも高低差と天気はその土地がもともと持っているものだから、大きな影響があると思っている。
以前に南イタリアからベネチアに移動したとき、何故かベネチアに着いたとたん懐かしい感じがした。
それは空の色が自分の住む関東地方の空に似ていたからだと思う。
南イタリアはいいところだけど、空が青過ぎてずっといるには疲れる感じがあった。
 
空の色の違いってのは、気候の違いだし、ざっくり言って緯度の違いからくる。
話は脱線するけど、ブラジルは赤道近くから、黒人、東洋人、白人と、それぞれ多く住むエリアが分かれていて、住みやすい場所と出身地の気候の関係を実感できる。
そんな亜熱帯のニューオリンズの冬も、なんとなく関東の秋に似ている感じがする。
(関東だけじゃなく、関西や九州もそうだろうと思う。)
 

ニューオリンズには日本の方がやっている「雪」って居酒屋がある。

フレンチマン・ストリートっていう、観光客だけじゃなく現地の連中も遊ぶエリアにあって、現地の人に愛されているのが分かる店だ。
日本の古い映画が壁に映されて、古い歌謡曲が流れる店内は、とても落ち着くいい店。
一人で着ていた地元の人に、「前も来ていたよね?」
なんて話しかけられて、「いや初めてだよ」って答えちゃったけど、後で後悔した。
それが自分に話しかけるきっかけだったことに気付いたからだった。
通りでは、各々の店から音楽が聞こえてきて、路上でもビッグバンドが演奏し、アーティストがナイトバザールを開いている。
 
ニューオリンズってとこはあんまり治安良くないし、ハリケーン・カトリーナの影響で住民が移って、戻ってこない建物がまだある。
でも店も、路上も音楽が溢れていて、町が音楽に浸かっているような町だ。
どこかから流れ着いた旅人が、そのまま居着いてホームレスになったりもしている。
でもそういう感じも、ミシシッピ川河口のこの町は受け入れている感じがして、何だかとても安心する。




デトロイト その2

 今回、デトロイトに来た理由は3つある

一つは産業が衰退し行政が破たんした町がどのように再生していくのかを見ること。

また、デトロイトテクノで知られる音楽を触れること。

そして、世界的に有名な北米国際オートショーに行くことだった。

でも、そもそも市街地に人が少ないこの町では、クラブみたいなものがほとんど無く、夏のフェスのときだけ盛り上がるということだった。

なので今回はそんな街の現状と再生について。

(オートショーについては、別にまとめたいと思う。)

 

デトロイトの市境にある通りの名前を8mile(エイトマイル)と言う

(写真は8マイルロードと、それを表す標識)

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8マイルロードから、デトロイト中心地に近い方には7マイルロード、外側には9マイルロードと、距離の名前が付いた通りが順番にあるのがこの町の特徴だ。
 8マイルより内側のデトロイト市内には、黒人(アフリカ系アメリカ人)を中心とした貧困層が多く住み、外側の市外には白人を中心とした富裕層が多く住む。
それを隔てているのが8マイルロードとなっている。
そして、この通りの名前がタイトルになった映画、それがエミネムの8マイルだ。
映画では、白人でありながらも金銭面で苦労しながら内側に住み、黒人文化と衝突するエミネムの姿を描いている。
そんな一本の通りを挟んで、どれほど雰囲気が変わるのか。
それを確かめたくて、おっかなびっくりレンタカーで行って見た。
 
まず内側のデトロイト市内側。

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人も住んでるけど、朽ちかけた家と、すでに更地になった土地も多い。
 
一方で外側。 

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写真だと分かりにくいけど、少なくても崩れた家が無くて、人が住んでいる気配が強い。
市が違うとは言え、通り一本で世界が変わるのは、不思議に感じる。
 

後で出会った人は、8マイルそばの内側の通りを歩いていた時、金目の物を全部取られたって言ってた。

同じ時期に行ってたわけだし、車だったけど危なかったかもしれない。
 

多民族社会

黒人の多いデトロイトには、黒人の歴史を展示するアフリカ系アメリカ人歴史博物館がある。
その日はちょうど、黒人公民権運動の代表的人物、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの日で祝日だった。
ちなみにMLK Dayって言うから、最初は何かわかんなかった。
(ミルクかと思った。)
服屋のセールで配られたチラシに、MLKセールと書かれていて、そこにあった写真がキング牧師だったことでやっと理解した。
 そんな特別な祝日だったからか、博物館には普段より沢山の人が来てたと思う。
だけど白人系の人は少ないし、アジア系はまず見かけなかった。
 
施設はとてもよくできている。
いかに大変な歴史を経て今に至るかを、奴隷船や、彼らが住んだ家、街の模型を通ることで、追体験できるようになっている。

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そして順路の最後、出口の所には、初のアフリカ系大統領としてのオバマ大統領の写真とサインがある。
ある意味、オバマ大統領が誕生するまでの、壮大なサクセスストーリーにもなってるわけで、もし反オバマの人でも、素直にすごいと思わざるを得ない演出だと思う。
デトロイトには全米最大のイスラム系コミュニティもあって、イスラム系の博物館もあるんだけど、開館時間が短いのと、辺鄙なとこにある関係で今回の滞在では行けなかった。
また、自分の好きな映画「グラン・トリノ」の舞台でもあって、モン族の多く住むエリアがあるらしい。
いろんな民族が住んでいるというのは、この町の大きな特徴だと思う。
 

SHINOLA

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デトロイトという町が衰退した理由は、行政と自動車産業がタッグを組みすぎていることで、他の産業が生まれる芽を伸ばせなかったし、潰してしまったということだ。

行政は、自動車産業が衰退し始めて以来、ゼネラル・モーターズを入居させるためにGMタワーを作ってみたり、モーターショーを開催するための会議場と市街地を周回する新交通システムを作ったりしてきた。

これらは、新たな産業への転換を図るためではなく、あくまでも既存産業を復活させるためになされた事業だった。 

そんな中で、新しいビジネスの芽の一つに、米国製の時計、自転車を作るSHINOLA(シャイノラ)がある。
あえてデトロイトの中心部に店を出し、GMの建物の跡を工場として使っている。
今はバーニーズ・ニューヨークでも買えるから、せっかくだし本店でしか買えないものを聞いてみた。
だけど、ちょっと高いものしかないって数十万円する時計を紹介されたので、おとなしくメモ帳とか、手頃な文具をいくつか買った。
どれも洗練されたデザインで、ロゴにはデトロイトの文字が誇らしげに書いてある。
店員さんたちの感じも良く、ついでに近くにクラブが無いかを聞いたりしたけど、やっぱわかんないとのことだった。
このエリアには、雑貨屋、パン屋、カフェ、ビール工場やうまいサンドイッチ屋も集まって来ている。
いくつかの店先には、デトロイトの中心に店を構えることに誇りを持っている、そんな文句の書かれたステッカーが貼ってあったりする。
危険なイメージが先行するデトロイトだけど、なんとなく西海岸風のカジュアルな雰囲気があるこのエリアはとてもリラックスできる。
 

観光にデトロイトは魅力的かと言われたら、それはわからない

でも、この町で起こっていることに触れられたことは、とても有意義に感じた。
巨大産業によって肥大化した町と、その産業が衰退したことで、共に衰退して行った町。
いろんな民族がそれぞれの文化を持って、生きていく町。
それは決して他人事ではなく、あるかもしれない自分たちの将来だと思う。

そして、そんな町に見える希望みたいなもの、それは現地に行ってこそ感じられるのではないかと思う。 

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デトロイト その1

デトロイトって街は、印象的な街だ。

 

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 デトロイト以外の場所で、アメリカ人にデトロイトに行ったっていうと、なんで行ったの?って理由を聞かれたり、あんな危ないところによく行くねぇって感心されたり、とにかくイメージが悪い。

前情報でも、その荒廃っぷりや治安の悪さは聞いていたけど、実際行ってみると想像以上の荒れ具合に戦慄を覚えた。

まず、中心部のオフィス街でも人が少ない。

フォードビルやクライスラービルっていうような、大手の名前のビルですら空室募集の掲示がある。

逆にその中にあって、市の肝いりで作られたGMタワーだけが異様に輝いている。

そしてビジネス街の周辺には廃墟になった建物や、更地が広がり、さらに郊外には朽ちかけた住宅街が続く。

今回泊まっていたのは、中心部から車で10分、歩いて30分くらいの、昔からの住宅地(だったところ)にある、ホステルだった。

チェックインのとき、管理人のジェフに説明されたのは、そこより西側に行くとあまり治安が良くないってことと、そこで人にあったら、慌てずに笑顔で「ハイ!」って挨拶しろってことだった。

 

ひとまず周辺を歩いてみた。

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マイナス15度でしかも雪道ってこともあるけど、人がほとんどおらず、ゴーストタウンっていうイメージがしっくりくる。

そんな中で歩いている人に会うと結構身構える。

ジェフのアドバイスでビビってるのもあるけど、明らかに見た目がヤバそうな感じの人だったり、ホームレスの人っぽい感じの人達だからだ。

 そこで、今回シアトル便で見たゾンビ映画ウォーム・ボディーズ」を思い出した。

荒廃した街をゆっくり歩く感情の無いゾンビ達。

デトロイトを歩いていて感じたのは、まさにゾンビ映画の世界だなぁってことだった。

だから初めて人とすれ違うってときには、相当緊張した。

だけど3mくらいまで近づいた時、彼は口角を少し上げた笑顔で静かに「ハイ!」って挨拶してくれた。

そして挨拶しながら、彼は手に持っていた手袋を落としたのだった。

そこで気付いた。

緊張していたのは、自分だけじゃなくて、相手もそうだったってことに。

さっきのゾンビ映画、最初は憎み合い殺しあう人間とゾンビだったけど、そのうちひと組のゾンビと人間が恋に落ち、お互いが理解しあえることを発見したところから、やがてゾンビが感情を取り戻し、人間と共生できるようになるって筋書きだった。

 

デトロイト住民をゾンビ扱いすることに問題があるのはわかってる。

でも、そのくらい自分は彼らを恐れていたってことに気付いた。

相手からしてみれば、こんなところを歩く一人の東洋人は、相当不審に思っていただろう。

こういう感覚に至ってから、デトロイトの街と自分の距離がぐっと近づき、フラットな感覚でデトロイトを見ることができるようになった。

次回はその後のフラットに見られるようになってからのデトロイトについて。

キーウエスト 本土最南端にある島時間と「その先」

今回の旅のハイライトの1つ、マイアミからキーウェストまでの海の上を走るドライブ。

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マイアミの南には小さな島が連なっていて、その一番先がキーウェストって島。

「キー」とは「島」って意味らしい。

その小さな島々を繋ぐ道があり、島と島の間を最長7マイル(約11.2km)の橋で繋いでいるドライブロード。

 

で、実際走ってみると、海の色がかなりきれい。

一度くらい車を運転して行ってみるのはおすすめ。

ただマイアミから260kmもあって4時間はかかる。

今回一日で往復しちゃったけど、できれば途中かキーウェスト1泊、もしくは帰りはキーウェストから飛行機で帰るのがいいと思う。

 

キーウェストの町は、カラフルな家が立ち並んでいて、カリブや中米のコロニアルな雰囲気。

気候はもう熱帯なんで、まんま南の島って感じ。

泊まってないけど、夜もにぎやからしい。

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で、今回特に気に行ったのは、キーウェストに向かう途中の島々。

ゆったりまったりな時間が流れていて、自分が好きなアジアの南の島の雰囲気。

車で通り過ぎるだけでも、泊まってゆっくりしたいと思うくらい、寄れなくて一番残念だった場所。

機会があればぜひいつか行ってみたいと思う。

 

キーウエストには人気の写真スポットがある。

それはアメリカ本土最南端のモニュメント。

そしてその南、150kmも離れていないところに、今も敵対関係が続いているキューバがある。

こんな辺鄙なところにこれだけの道路とインフラを整備している理由は、軍事上の要所だからなんだってことに気付く。

キーウェストにはでっかい軍施設があるし、途中の島でも大きなアンテナ施設が目につく。

 

アメリカを回っていて思うんだけど、この国は軍の存在をアピールするところがある。

飛行機なんかは軍人料金があるし、退役軍人“ベテラン”であることを誇りにする文化もある。

そして要所要所にある軍施設。

シアトルの沖合にあるウィドニーアイランドって島もそうで、すごく自然環境が豊かでのどかな観光の島なんだけど、太平洋岸の防衛の要らしく、島住民の多くは軍関係に勤めているらしい。

昔の砦が解放されている公園でも、岸壁の穏やかな芝生のはらっぱに、あえて大砲が残されいる。

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日本で生活しているとここまで強調されないけど、アメリカって国は日常生活でも軍その存在を意識させられる。

今回の旅ではそんな敵国キューバにも行くことにしたわけだけど、それはまた別の機会に。

フォートローダーデール

アメリカの豊かさ見本市

 

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良いところっぽいなぁと思って、前日に泊まることを決めたのがフォートローダーデールだった。

日本にいると聞かない名前だけど、アメリカでは有名らしい。

そんな感じなんで事前に調べるとかしてなかったから、現地に行って驚いた。

マイアミの北にある海岸から、深く入り組んだ運河が続いていて、そこに本当の意味でのマンション(「豪邸」)が延々と並んでる。

もちろんクルーザー付きで。

後で調べたら世界で一番クルーザーが集まる”Yachting Capital of the World”って呼ばれるような町らしい。

冬の間、寒いところに住んでる人が、避寒地の別荘として利用するんだそうだ。

今回泊まったのはハイアットリージェンシー

そこもヨットハーバーが敷地内にあって、別荘を所有しない船乗りが陸で過ごすために利用したり、船が無くてもレンタルクルーザーを利用できるようなリゾートホテルだった。

 

日本に生まれ育った同世代の人間は、もう日本が豊かになってから生まれてるから、豊かなアメリカに憧れるって人が少ないと思う。

時に日本の文化の方がレベル高いとも思ったりするし。

でも、今回このクルーザーと居並ぶ豪邸群を見た時、豊かさのレベルの違いを見ちゃったって思った。

いや別にそれがうらやましいかとかそんなの関係無く、多分3億人の国民の内の1%も居ないかもだけど、日本ではそこまでクルーザーって普及してないし、自分の延長線にああいう暮らしとああいう知り合いが浮かばないから、愕然とした。

しかも泊まったホテルは、プールや庭はリニューアルされているけど、建物は築30年以上経っているような感じだった。

ってことは1980年代には豪邸とクルーザーっていう場所になっていたわけ。

あれは今回の旅でベスト3に入るショックな光景だった。

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